👬 1章1:なぜキリストの弟子になりたいのか?(弟子になる 連載1)


目次

なぜキリストの弟子になりたいのか?

こんな質問をされても、「いや、私はキリストの弟子になりたいとは思っていない」という人もいるかもしれません。かく言う私も、キリストを罪からの救い主と信じた後でも、「キリストの弟子になる」という言葉には抵抗を覚えた時期がありました。おそらく【弟子】という言葉の響きに反発を覚えたのでしょう。

日本の社会の中でも、素晴らしい師弟関係があるのは認めます。しかし一方で「弟子」というと、落語や漫才、武道や格闘技、茶道や華道、工芸や芸術などの世界で、厳しい訓練や修練が待ち受けている印象を持ちます。小学校の頃からアメリカと日本を行き来して両国のコミュニケーションを体験した私にとって、日本の「師匠と弟子」という言葉は、閉鎖的な人間関係の中で、[1]左甚五郎(下欄参照)が弟子入りした師匠のように残虐で、不条理な精神論を振りかざすイメージを連想させます。そのような師弟関係のあり方に、私は反発を覚えるだけでなく、「これは私には無理でしょ」という思いが湧いてきます。

というわけで、「弟子」という言葉の響きの前に、私などは、「キリストの弟子になる? それはあまり考えたくない」、「そのような聖書箇所はスルーしておこう」というのが素直な気持ちでした。しかし、そんな無知で先入観の強い者であっても、聖書を読み続けると、聖霊に理解を助けられ、【キリストの弟子】の素晴らしさが見えるようになったのです。


[1] 左 甚五郎(ひだり・じんごろう)とは、刀造りの名職人。彼は、残酷な師匠に弟子入りしていた。ある日、刀を打つための水が入った桶の中に、自分の右手を差し入れたところ、師匠に右腕を切り落とされた。彼は、水温を調べるために手を差し入れたのだが、「弟子であっても企業秘密」という器量の小さな師匠に巡り会ったことが災いした悲しい事件だった。

最初に、神が私とあなたを愛された、だから神を愛する

そのような私でしたが、今では、キリストの弟子になりたいという欲求が与えられているので不思議としか言いようがありません。「なぜ、キリストの弟子になりたいのですか?」それには2つの理由があります。最初の理由は、「なぜならキリストが私を先に愛されたから」です。つまり、弟子入りする相手の師匠は、精神論を振りかざしたり、暴力を振るったりする方ではないのです。私の罪のために、ご自分の命を捨てられたほどに愛してくださった方だから、この方であれば弟子入りしても大丈夫というのが1つ目の理由です。

2つ目の理由は、「キリストの弟子がどのようなものか理解できたから」です。この章では、最初の理由について説明させてください。「キリストの弟子とは、どのようなものか?」については、次の2章で説明させていただくので楽しみにしていてください。

それでは、最初の理由である、「キリストが先に愛されたから」について説明します。キリストの弟子の1人、元漁師のヨハネは、次のように言っています。「私たちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛し、私たちの罪のために、宥めのささげ物としての御子を遣わされました。ここに愛があるのです。愛する者たち。神がこれほどまでに私たちを愛してくださったのなら、私たちもまた、互いに愛し合うべきです」(Ⅰヨハネ4:10-11)

この聖書箇所は、「最初に神があなたを愛したのだから、あなたがたも互いに愛し合いなさい」と勧めているのです。つまり、「互いに愛し合いなさい」という神の命令に従う動機づけは、「最初に神が私を愛されたから」という理由に尽きるのです。神から愛されたという信仰がなければ、神の愛に応答することは不可能でしょう。弟子になることも、キリストへの応答なのです。「弟子になりなさい」、「弟子をつくりなさい」というのはキリストの命令です。神の命令には、義務感だけでは従い続けることはできません。キリストの命令を守る秘訣は、神の愛に応答することであり、これこそが最も大切なことなのです。

実は、弟子となることと、「互いに愛し合いなさい」というキリストの命令の間には、切っても切れない相関関係があります。キリストは、「互いに愛し合うのであれば、あなたがたは私の弟子として認められます。」(ヨハネ13:35参照)と【弟子】を定義されました。この定義についても、2章で詳しく述べるので楽しみにしていてください。

神から愛されているこのことが分からない「クリスチャン」は、何年経っても自発的に神に応答することはありません。神に応答しようとしない者が、神の言葉にも関心を示せないのも当然のことです。かく言う私がそうでした。しかし、なぜ私が神に応答することができるようになったかと言えば、神がこんな私を愛してくださったことを知って信じたからです。

それでは、なぜ神の愛を信じることができるのでしょうか? それは聖書が宣言しているとおり、神が決められた2つの方法に従ったときに起こるのです。その2つとは、まず第1に、信じる対象であるキリストについての情報を聞き続けることであり、第2に、信仰はプレゼントなので、神に向かって「ください」と願うことです。

最初の方法について、パウロは、「信仰は聞くことから始まります。聞くことは、キリストについてのことばを通して実現するのです」(ローマ10:17)と言っています。キリストが命を捨てるほど、つまりご自分の命を与えるほどに、あなたを愛しておられることは、キリストについて聞き続ける以外に知る方法はありません。さらに、父なる神が「ひとり子を与えるほどに、あなたを愛しておられる」ことについて知るのも、キリストについて聞き続ける以外にはないのです。

信仰とは、自分の信じ方を信じることではなく、キリストがどういう方で、何をしてくださったかを聞いて信じることなのです。つまり、あなたの体調や気分がよくても悪くても、キリストはあなたを愛しておられることを信じるのが信仰です。日本語では、「信じる」という漢字と、「仰ぐ」という漢字を組み合わせて【信仰】という言葉を表わしました。これはよくできている熟語だと思います。信仰とは、自分の内側の状態を見て信じるかどうかを決めるものではなく、天におられる父なる神を仰いで、神を信頼するものなのです。

つまり、天におられる父なる神によって天から遣わされたイエス・キリストについて知ると、神はあなたを愛しておられことを信頼できるとパウロは言っているのです。主イエスは、「わたしを見た人は、父を見たのです。」(ヨハネ14:9)と言われました。自分や他の人間を見ても信仰は与えられません。キリストを見ると、つまりキリストについて知り続けると、必ず信仰がプレゼントされると聖書は約束しているのです。

第2の方法

第2の方法についてペテロは、「イエスによって与えられる信仰」(使徒3:16)と言っています。つまり、信仰とは自分の内側から絞り出すものではなく、神があなたの外側から与えてくださるプレゼントであると明言しているのです。ですから、神に向かって「信仰を与えてください!」と頼むと、キリストを信じる信仰が与えられるのです。

もしあなたが、神がいると仮定して神に信仰を求めるのであれば、神はあなたに信仰を与えてくださいます。そのとき、神があなたを愛しておられることも理解できるようになります。さらに、知性でそれを理解できない分は、体験させることによって神の愛を教えてくださるのです。

ペテロが述べた第2の方法を実践していたのは、ほかでもないパウロです。彼は「神が愛してくださっている」という信仰が与えられるように祈り求めていました。しかも自分のためではなく、エペソのクリスチャンのために求めていたのです。神が彼らを愛しておられることを、彼らが理解し体験できるように、つまり、「神は、ほかでもない自分を愛している」という信仰が、さらに彼らに増すように求めていたのです。

パウロは、エペソのクリスチャンのために「(神の愛の)広さ、長さ、高さ、深さがどれほどであるかを理解する力を持つようになりますように」(エペソ3:18-20)と祈っていました。それだけではなく、彼らが「人知をはるかに超えたキリストの愛を知ることができますように」と祈り求めていたのです。この「知る」という言葉は、もともと書かれていたコイネー(古代ギリシヤ語)では【ギノスコ】といって、【体験する】という意味です。つまり、パウロはクリスチャンたちが、さらにキリストの愛を体験できるようにと祈り求めていたのです。

そのような信仰が与えられれば、心の底から「神は私を愛している」と無理なく思えるようになるのです。そして、「私もキリストを愛したい」という欲求が与えられるのです。それこそが、キリストを信じたゆえに起こる結果です。ペテロは、そのことについて次のように述べています。「あなたがたはイエス・キリストを見たことはないけれども愛しており、今見てはいないけれど信じており、ことばに尽くせない栄えに満ちた喜びに踊っています。あなたがたが、信仰の結果であるたましいの救いを得ているからです」(Ⅰペテロ1:8-9)

つづく

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

桜井 知主夫のアバター 桜井 知主夫 プロテスタント・キリスト教会、ジーザス・コミュニティ国分寺の牧者

やさしく学べるクリスチャンブログにようこそ! 私は、東京にあるプロテスタント・キリスト教会、ジーザス・コミュニティ国分寺の牧者の桜井知主夫(さくらいちずお)です。今まで、3つの教会に牧者として仕えて30年になります。’99に現在の教会を開拓する機会に恵まれ、今日に至ります。聖書的クリスチャンライフをわかりやすく説明します。

目次